
不動産査定で起こるトラブル事例とは?避け方やポイントもご紹介
不動産の売却査定は一見便利ですが、思いがけないトラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。「営業電話が続く」「査定額が予想と違う」など、ご自身の大切な不動産を納得のいくかたちで売却するためには、事前の知識と準備が必要です。この記事では、無料査定で起こりやすいトラブル事例や、査定額の信頼性を見極めるポイント、トラブルを防ぐための具体的な対策、そして安心して査定後の手続きを進める工夫までを分かりやすく解説します。
無料査定で起こりやすいトラブルとは
不動産会社が無料で査定を提供している背景には、売却希望者との接点を持ち、媒介契約を結んでもらうことによって得られる成約時の仲介手数料(売却価格の概ね3%+6万円〈税別〉)を得ることが目的の営業活動であるという事情があります。
その結果として、無料査定を利用した売却希望者には次のような典型的なお困りごとが発生しがちです:
・相場より著しく高い査定額の提示(注目を集め契約を促す戦略で、実際には売れず値下げが必要になるリスク)。
・逆に極端に低い価格提示(早期売却を狙う不動産会社が売主の利益を犠牲にして手間をかけずに売却し、仲介手数料を得ようとする場合)。
・契約を急がせるようなしつこい営業電話や連絡(売却意欲の有無にかかわらず継続的な連絡が続くケースがある)。
・査定結果がなかなか届かない、あるいは断られてしまう場合(売れにくい物件や繁忙期には対応が後回しになることも)。
・訪問査定時の対応により近隣に売却を知られる(社用車や社員の服装などで目立ち、周囲に気づかれることがある)。
これらが起こりやすい理由として、まず不動産会社側にとって無料査定は「売却活動の入り口」であり、注目を集めたい営業手段である点が挙げられます。また、営業に急ぐあまり丁寧な説明が省略されてしまったり、査定精度よりも迅速な対応を優先してしまう構図も背景にあります。
以下に、代表的なトラブルを整理した表を示します。
| 典型的なトラブル | 概要 | 発生の仕組み |
| 高すぎる査定額 | 相場より明らかに高い提示 | 注目を集めて媒介契約につなげようとする営業手法 |
| 低すぎる査定額 | 相場より著しく低い提示 | 早期売却を狙い、売主利益より仲介手数料確保を優先 |
| しつこい営業連絡 | 断っても頻繁な電話や訪問 | 査定を営業機会とみなし、連絡を繰り返す |
査定額の信頼性を見極めるポイント
不動産査定額はあくまで目安であり、極端に高すぎるまたは低すぎる場合には慎重になる必要があります。査定額の妥当性を見極めるには、以下のポイントが重要です。
| 注目すべき点 | 内容 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 極端な査定額のリスク | 30%以上異なる査定額が出ることもあり、信頼性に懸念がある | 複数社の査定額を比較して平均値や中間値を確認する |
| 査定額はあくまで目安 | 査定価格は「おおむね3か月以内に仲介市場で売れるであろう価格」であり、必ずしも成約価格とは一致しない | 査定額と売り出し価格、成約価格の違いや相関を理解する |
| 査定根拠・算定手法の明示 | AI査定・机上査定・訪問査定など方法によって反映内容に差がある | どの方法が使われたのか、具体的な根拠が明記されているかを確認する |
まず、査定額が極端に高すぎたり低すぎたりする場合は、その背後にある理由を探ることが大切です。実際に、不動産会社により同じ物件でも査定額が30%以上異なるケースがあると報告されていますので、複数の査定を比較することで偏りを避けることができます。
また、査定額はあくまで「売れそうな金額の目安」であり、売り出し価格や成約価格とは異なる点を理解することが重要です。売り出し価格は売主が設定し、成約価格は買主との合意によって決まります。したがって、査定額がそのまま売れ値になるわけではありません。
さらに、査定の根拠や使用された方法を確認することも信頼性の判断には欠かせません。AI査定は自動で迅速に算出される便利さがありますが、詳細な建物や周辺環境の個別事情は反映されにくい傾向があります。一方、机上査定(簡易査定)は登記情報や周辺相場を用いて人が算出し精度はやや高く、訪問査定(実査定)は現地の状況や個別の特徴を確認できるため最も精度が高い傾向にあります。
査定額について納得を得るためには、どのような算定手法が用いられ、どのような根拠があるかを明示してもらうことが重要です。具体的な事例や取引価格などが資料として提示されていれば、信頼性が高まります。
以上のような点を踏まえ、査定額の信頼性を見極めることが、トラブルを未然に防ぎ、不動産売却を安心して進めるうえでの第一歩となります。
トラブルを未然に防ぐための具体的な対策
売却査定におけるトラブルを避けるには、以下のような実践的な手順が効果的です。まず、査定を依頼する前に自分で相場を把握することが重要です。国土交通省が提供する「不動産情報ライブラリ」や「レインズ・マーケット・インフォメーション」、また、不動産ポータルサイトで近隣の売り出し価格や成約価格を確認し、査定額の妥当性を判断できる基準を持ちましょう 。
次に、必ず複数の査定を比較することをおすすめします。複数の不動産会社に査定を依頼することで、極端に高すぎる・低すぎる査定額を避けられ、各社の信頼性や対応にも差があるため、安全な選択がしやすくなります 。
最後に、不動産会社とのやり取りはすべて記録に残しましょう。連絡方法や査定額の根拠、やりとりの日時などを文書化することで、後から情報を確認でき、不明瞭な対応やトラブル回避に役立ちます 。
以下に、これらの対策をまとめた表を掲載します。
| 対策 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 自分で相場を調べる | 国のデータやポータルサイトで売り出し・成約価格を確認 | 査定額の妥当性を判断しやすくなる |
| 複数依頼して比較する | 大手・地域密着型など複数社に査定依頼 | 適正価格や信頼できる査定会社を見極めやすくなる |
| やり取りを記録に残す | 査定額の根拠や連絡内容を文書化 | 後で確認でき、不透明な対応を防げる |
査定後の進め方と安心感を保つ工夫
不動産の査定を終えた后は、ただ焦って契約を進めるのではなく、以下のような工夫をすることで安心して次のステップに進めます。
まず、査定結果をもとに媒介契約(一般・専任・専属専任)の種類や特徴を比較して選ぶことが大切です。たとえば、専任媒介契約では二週間に一度以上、進捗の報告義務がありますし、専属専任媒介では一週間に一回以上の報告が義務づけられており、透明性と安心感が高まります。こうした契約の違いを理解して選ぶことが、煩雑な進行を避ける第一歩です。知識を持って計画的に選ぶ姿勢が信頼感につながります。
次に、担当者の対応の丁寧さや説明の分かりやすさにも注目してください。たとえば、売却活動や内覧の流れ、報告頻度、見学者対応の準備などを、 見やすい表やスケジュールで示してくれる担当者であれば安心です。具体的な進捗を文章や表で共有してくれる対応は、信頼関係を築くうえで大きな安心材料になります。
また、必要に応じて外部の相談窓口を利用するのも有効です。たとえば「消費生活センター」や「地方自治体の相談窓口」など、公的な相談先を活用することで、客観的な視点やサポートを得られ、万一の不安要素があっても安心できる体制を整えておくことができます。
| 工夫の項目 | 具体的な内容 | 安心の効果 |
|---|---|---|
| 媒介契約の種類を理解する | 一般・専任・専属専任の特徴と報告義務の確認 | 進行状況の可視化と透明性の確保 |
| 担当者の説明・対応の確認 | スケジュールや活動内容を表や文章で明示 | 信頼感の醸成と安心感の向上 |
| 外部相談窓口を活用 | 消費生活センターや自治体窓口への相談 | 第三者の意見が得られ、安心材料となる |
これらの工夫を取り入れることで、査定後の不安が軽減され、安心して売却のステップを進められます。信頼できるサポート体制と会社選びが、不動産売却を成功へ導く鍵となります。
まとめ
不動産の売却査定においては、無料査定の背景や発生しやすいトラブルを正しく理解し、冷静に対応することが大切です。また、査定額を鵜呑みにせず、その根拠や算定方法を確認しながら、複数の査定結果を比較することが、安全な売却への第一歩となります。事前に相場を調べたり、やりとりの記録を残すことで、万が一のトラブルにも備えられます。不動産の売却は一度きりの経験となる方も多いため、今回ご紹介したポイントや対策を活用し、安心して売却活動を進めましょう。